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■□■萩焼豆知識そのA [取り扱い方その1]■□■

 

前回、萩焼きの吸水性について陶土の耐火度が高いため、1,200度くらいの温度では素地が焼き締まらないということをお話ししました。
 そうした萩焼きの上手な扱い方をお話しする前に、後に別項でもお話する予定ですが、萩焼きの特徴の一つにも挙げられる[貫入(かんにゅう)]について触れておきたいと思います。

 貫入というのは、萩焼きをはじめ粗陶器と呼ばれる土ものには比較的よく見受けられる釉表面のヒビのことです。
 このヒビは窯出し時、または窯出し後の冷却の際、素地と釉地と釉薬の膨張率と収縮差の違いによっておこります。萩焼きの場合は素地の収縮よりも釉薬の収縮の方が若干大きいために入るヒビです。(土物の青磁はこの逆の貫入が一般的です。)
 日本ではこうしたヒビはキズや釉薬の欠点とは見なされず、伝統的な産地や茶陶では却って一種の模様や景色として、その焼き物を特徴付ける個性と捉えられています。
 古来より必ずしも萩焼きのすべてが貫入ものとは限りませんが、貫入のあるなしで発色や風合いにも大きく影響してきます。
 萩焼きでは多くの製品が貫入をもっているため、水分は貫入を通して直接素地に滲み込むことになります。

 萩焼きをお買い上げになった人で、ご使用前に消毒を兼ねて熱湯で煮沸される方がおいでになりますがお勧めできません。
 萩焼きの中にはどうかすると妙にほこり臭いものが時々あります。公的機関でいろいろ検査してもらっても未だに原因がはっきりしませんが、おそらく素地の中にごく僅かに残る炭素分が臭いを吸着するためではないかといわれています。冬場の空気の乾燥している時期にその傾向が強いようにも思います。
 いきなり熱湯の中に浸すことは却ってそうした臭いを封じ込めることにもなりかねませんので、まずは普通の水で十分に洗うか浸していただき素地に水を含ませてからお使いいただければ臭いの問題はほぼ解消できると思いますし、その後のご使用になるにつれての汚れ方にもずいぶん違いがでてくるものと思います。
 水をしっかり含ませるのは初めてご使用になる時だけで十分だと思います。その後は乾いた状態で熱いお茶などをお入れになっても構いません。ただ茶道などのおもてなしの心遣いからすると、伊賀焼きなど堅牢に焼きかれた花入れでも使用のたびに水を含ませ、シットリ感を持たせた上で花を活けると言われていますので、どの焼き物に限らず陶器(土物)の扱い方の基本として知っておかれたほうがよいでしょう。

 貫入に入った茶渋を単なる汚れと見るか、手に馴染んで落ち着いてきたと見るかは難しいところですが、現在のように多様な雑器を造っていなかった茶陶時代、釉薬でいえば基本的には透明釉(土灰釉)と白釉(藁灰釉)しかなかった時代には、透明釉の貫入製品に水溶きのベンガラを擦り込んでいました。今でも抹茶々碗など茶陶の一部では結構行われています。
 ベンガラ(本来はベニガラ、漢字では紅柄・弁柄・辨柄)というのは赤い酸化鉄の粉末で、昔の鳥居や古い町並みのベンガラ格子に使われたのと同じものです。
 これを貫入にあらかじめ擦り込んでおきますと(擦り込み終わったのち水洗いもしますので)、茶渋などのいきなりの浸透が妨げられ汚れ方もずっと穏やかなものになります。言葉は不適切ですが、最初から汚しておくわけです。
 ベンガラは長い期間ののち酸化されて黒くなってきますが、酢などに触れると酸化が促進されて早く黒ずんできます。萩ではほとんど聞きませんが、他産地では柿渋の溶液(黒いタンニン酸)を使うところもあったようです。
鉄とタンニン(カテキン)はどちらも人体に害はありません。

 その他ご使用に際しての疑問などありましたら、ご遠慮なくお問い合せ下さい。

■大きめで疎な貫入の例 ■細かく密な貫入の例

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萩焼窯元 萩陶苑
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